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死後事務委任契約とは?できることと費用・注意点を解説

死後事務委任契約とは?できることと費用・注意点を解説

自分が亡くなった後、葬儀や役所への届出、公共料金の解約といった事務手続きを誰が担うのか、迷ったことはないでしょうか。死後事務委任契約とは、こうした死後の手続きを生前のうちに第三者へ託しておく契約です。身寄りがない方だけでなく、家族がいても負担をかけたくないという方にも選ばれています。

この記事では、死後事務委任契約で任せられる内容から、遺言書・成年後見制度との違い、依頼先の種類、メリット・デメリット、費用相場までをまとめて解説します。判断能力が低下する前に契約を済ませておく必要があるため、対策の優先順位を整理しながら読み進めてみてください。

目次

死後事務委任契約は死後の手続きを託す契約

死後事務委任契約は、葬儀・埋葬、行政手続き、賃貸住宅の解約といった、自分が亡くなった後に必要になる事務手続きを、生前に結んだ契約に基づいて第三者へ委任するものです。民法上、委任契約は委任者の死亡によって終了するのが原則ですが、最高裁平成4年9月22日判決は、死後の事務を含めて委任する内容の契約であれば、死亡後も契約の効力が続くことを認めています。この判例により、死後事務委任契約は法的に有効な仕組みとして広く利用されるようになりました。

現在では、身寄りのない高齢者だけでなく、家族に負担をかけたくないという方が終活の一環として結ぶケースも増えています。

契約で任せられる内容とできないこと

東京弁護士会の解説によると、死後事務委任契約で任せられる内容には、葬儀・火葬・納骨の手配、健康保険証や年金受給権の返還手続き、公共料金や携帯電話の解約、賃貸住宅の明け渡し、SNSやサブスクリプションなどデジタル遺品の整理、ペットの引き渡し先の手配などがあります。委任する範囲は契約書に明記した内容に限られるため、依頼したい事務は漏れなく盛り込んでおく必要があります。

一方で、財産の分配や相続に関する決定は死後事務委任契約の対象外です。誰にどの財産を遺すかを定めたい場合は、別途遺言書を作成する必要があります。また、生存中の医療方針や介護の判断は任意後見契約の範囲であり、死後事務委任契約ではカバーされません。

遺言書・成年後見制度と何が違うのか

遺言書は、誰にどの財産を遺すかという財産の分配を定めるものです。死後事務委任契約は財産分配を扱わないため、預貯金や不動産を特定の相手に遺したい場合は、死後事務委任契約とあわせて公正証書遺言を作成しておく必要があります。

成年後見制度のうち任意後見契約は、本人の判断能力が低下した後、亡くなるまでの間の財産管理や身上監護を家庭裁判所の監督のもとで行う仕組みです。死後事務委任契約は死亡直後から始まる手続きを担うため、任意後見契約とは対象となる期間が異なり、両方をセットで契約しておくケースも珍しくありません。

身元保証契約とセットで結ばれることが多い

身寄りがない高齢者向けに身元保証サービスを提供する団体の多くは、身元保証だけでなく死後事務支援を支援内容の一つに組み込むなど、死後事務委任契約とセットでプランを設計しています。イオンのお葬式を運営するイオンライフ株式会社も、身元保証サービスのオプションとして死後事務委任を用意しており、終活サービスを選ぶ段階で死後事務まで含めて検討する方が多いのが実情です。単独で契約するよりも、身元保証・見守りとまとめて依頼できる団体を比較検討したほうが、契約数を抑えられる場合があります。

死後事務委任契約の依頼先は3種類ある

死後事務委任契約の依頼先は、大きく専門家・社会福祉協議会や自治体・民間事業者の3種類に分けられます。誰に依頼するかによって、費用の総額や依頼できる範囲、対応してもらえるまでのスピードが変わるため、それぞれの特徴を把握したうえで選ぶ必要があります。身近に相談できる専門家や事業者が思い浮かばず、どこに頼めばよいか迷う方も少なくありません。

以下でそれぞれの特徴を整理します。

弁護士・司法書士・行政書士などの専門家

弁護士・司法書士・行政書士といった専門家に依頼する場合、法律の専門知識を踏まえて契約書を作成してもらえるため、内容に漏れが生じにくい点がメリットです。相続や成年後見など他の手続きとあわせて相談できる事務所も多く、契約後に法的なトラブルが起きた場合の対応力も期待できます。一方で、依頼する専門家によって報酬額に幅があり、契約書作成費用に加えて死後の履行報酬が別途発生するため、複数の事務所から見積もりを取って比較することをおすすめします。死後事務委任契約を専門に扱う事務所であれば、遺言書の作成や任意後見契約とあわせて一括で相談できる場合もあり、契約の窓口を一本化したい方には向いています。

社会福祉協議会や自治体という選択肢

社会福祉協議会の中には、判断能力はあるが身寄りがない高齢者向けに、死後事務委任を含む見守り・生活支援サービスを提供しているところがあります。費用は無料から数万円程度と、専門家や民間事業者に依頼する場合と比べて抑えられる傾向がありますが、対応できる事務の範囲が葬儀・納骨や行政手続きなど限定的で、実施しているサービス内容は自治体ごとに差があります。まずはお住まいの自治体の社会福祉協議会に、対応可能な範囲を問い合わせてみるとよいでしょう。地域包括支援センターに相談すると、管轄の社会福祉協議会の窓口を案内してもらえる場合もあります。

イオンなど民間事業者のサービス

民間事業者では、身元保証サービスに死後事務支援が組み込まれているケースが目立ちます。イオンライフ株式会社が運営するイオンのお葬式の身元保証サービスでは、身元保証料(預託金)33万円に加えて、葬儀・納骨・死後事務支援費として62万5,000円〜が必要で、初期費用の合計は169万6,400円〜となっています。水道・電気の停止手続きや保険証の返還、年金受給停止の手続きなどを依頼できる一方、対応地域が首都圏・東海圏・近畿圏や札幌市近郊など一部エリアに限られる点には注意が必要です。葬儀会社が提供するサービスのため、別の葬儀社とすでに契約している場合は、内容が重複しないか確認しておきましょう。

死後事務委任契約で得られる2つのメリット

死後事務委任契約の最大のメリットは、家族に負担をかけずに、自分の希望どおりに死後の手続きを進められる点です。特に身寄りがない方や、家族が遠方に住んでいる方にとっては、契約しておくことで安心感が大きく変わります。

誰にどこまでを任せるかを生前のうちに受任者とすり合わせておけるため、死後になって「何を頼まれていたのか分からない」という事態を防げる点も見逃せません。

おひとりさまでも死後の手続きを託せる

配偶者や子どもがいない、あるいは疎遠になっている親族しかいないという方でも、死後事務委任契約を結んでおけば、葬儀や納骨、行政手続きを代わりに進めてもらえます。身元保証サービスと組み合わせて契約しておけば、入院・入居時の身元引受人としての役割も含めて、生前から死後まで一貫して頼れる相手を確保できます。頼れる家族がいないことを理由に入院・入居の手続きが進まないという不安を、契約の段階で解消できるのも大きな安心材料です。

親族が担う事務負担を軽減できる

家族がいる場合でも、遠方に住んでいて頻繁に動けない、仕事や育児で時間が取りにくいといった事情があると、死後の事務手続きは大きな負担になります。誰に何を依頼するかをあらかじめ契約で決めておくことで、親族が急な手続きに追われずに済み、故人を悼む時間を確保しやすくなります。役所への届出や公共料金の解約など、平日日中でないと対応できない手続きが多いことも、事前に契約で担い手を決めておくメリットにつながります。

死後事務委任契約で押さえたい注意点

死後事務委任契約には、判断能力や家族関係に関わる注意点もあります。

契約書に書かれていない事務は原則として引き受けてもらえず、想定外の手続きが発生した場合は結局家族や相続人が対応せざるを得ない点も含め、次の点を確認しておきましょう。

認知症になると契約が結べなくなる

死後事務委任契約は、本人に契約内容を理解する判断能力があることが前提です。認知症などで判断能力が低下した後は、新たに契約を結ぶことができなくなるため、判断能力があるうちに契約を済ませておく必要があります。「まだ元気だから」と先延ばしにしているうちに認知機能の低下が進み、契約自体を結べなくなってしまうケースは珍しくありません。すでに認知症の症状が出ている場合の相続対策を検討している方は、死後事務委任契約とあわせて、判断能力が低下する前にできる対策を早めに整理しておくことをおすすめします。

相続人とのトラブルにつながる場合がある

死後事務委任契約は財産の分配を扱わないとはいえ、預託金や遺品の扱いをめぐって相続人との間で認識の違いが生じることがあります。特に、契約の存在を家族に伝えていなかった場合、死後に契約内容を知った親族が納得できず、トラブルに発展するケースも見られます。「なぜ家族ではなく他人に頼んだのか」という感情的な反発を招くこともあるため、契約を結んだ理由とあわせて、生前のうちに家族へ伝えておくとトラブルを防ぎやすくなります。

報酬とは別に実費・預託金が発生する

死後事務委任契約の費用は、契約書作成費用や履行報酬だけでなく、葬儀費用や行政手続きにかかる実費をまかなうための預託金が別途必要になります。預託金は契約時にまとめて預ける形が一般的で、想定より高額になりやすい点は注意が必要です。預託金の管理方法や、使いきれなかった場合の返金条件についても、契約前に書面で確認しておきましょう。預け先が受任者個人ではなく、信託口座や専用の管理口座で分別管理されているかも、あわせて確認しておきたいポイントです。

死後事務委任契約にかかる費用の相場

死後事務委任契約の費用は、依頼先や委任する範囲によって大きく変わります。契約書作成費用・履行報酬・預託金という複数の費用項目が組み合わさっているため、総額がいくらになるのか分かりにくいという声もよく聞かれます。

専門家に依頼する場合を中心に、費用の内訳と相場を整理します。

契約書作成費用と履行報酬の内訳

専門家に依頼する場合の費用相場は、契約書作成費用が5万円〜15万円程度、死後に事務を実行してもらう履行報酬が30万円〜100万円程度が目安です。契約内容を公正証書にする場合は、別途数万円程度の公証人手数料もかかります。委任する事務の範囲が広いほど履行報酬は高くなる傾向があるため、見積もり段階で内訳を確認しておきましょう。同じ専門家への依頼でも、遺言執行や任意後見契約とセットで結ぶ場合は、それぞれの報酬が別立てで発生する点にも注意が必要です。

預託金を含めた総額の目安を知る

契約書作成費用・履行報酬に、葬儀費用などに充てる預託金30万円〜100万円程度を加えると、総額は60万円〜220万円程度になるのが一般的です。委任する事務の範囲や葬儀の規模によって総額の幅は大きく変わるため、見積もりの段階でどこまでが含まれた金額なのかを必ず確認しましょう。判断能力が低下した後の財産管理まで見据えるなら、家族信託など別の財産管理の手段と組み合わせる方法もあり、その場合は別途手数料が発生する点もあわせて確認しておく必要があります。

お金がない場合は社会福祉協議会も選択肢になる

まとまった費用を用意するのが難しい場合は、社会福祉協議会が提供する死後事務支援サービスも検討できます。所得や年齢などの条件を満たせば、無料から数万円程度、月額でも数千円程度に抑えられる場合があり、専門家や民間事業者に依頼するよりも費用負担を軽くできる可能性があります。ただし対応できる事務の範囲は限定的なことが多いため、必要な手続きをすべてカバーできるかを事前に確認しておきましょう。

死後事務委任契約に関するよくある質問

死後事務委任契約に関するよくある質問と回答をまとめました。

死後事務委任契約は何歳から結べますか?

死後事務委任契約の締結に年齢の下限は定められていません。契約の締結には判断能力があることが前提となるため、何歳であっても内容を理解し、自分の意思で契約できる状態であれば結ぶことができます。実際には、将来に備えて60代・70代のうちに契約しておく方が多く見られます。

家族がいても死後事務委任契約は必要ですか?

家族がいる場合でも、葬儀の方法や遺品の扱いについて、家族の判断に委ねるのではなく自分の意思をはっきり反映させたいという理由で契約する方もいます。生前に希望を契約という形で明確にしておけば、家族が「本人はどうしてほしかったのか」と迷わずに済むという利点もあります。

契約後に内容を変更したり解約したりできますか?

死後事務委任契約は、委任者と受任者の合意があれば、契約内容の変更や解約が可能です。ただし、預託金を預けている場合は、解約時の返金条件が契約書に定められていることが多いため、変更・解約を検討する際は事前に契約書の条項を確認しておく必要があります。

死後事務委任契約書は自分で作成してもよいですか?

死後事務委任契約書を自分で作成すること自体は可能ですが、委任する事務の範囲や受任者の権限があいまいだと、死後に手続きが進められなかったり、相続人との間でトラブルになったりするリスクがあります。内容の抜け漏れを防ぎ、金融機関や役所など提出先での信頼性を高めるためにも、公正証書として作成しておくことをおすすめします。

ペットの世話も死後事務委任契約に含められますか?

ペットの引き渡し先の手配や、引き渡すまでの間の世話にかかる費用の負担については、死後事務委任契約に盛り込むことができます。ペットを新しい飼い主に引き渡すまでの具体的な手順や、引き取り先が見つからない場合の対応まで契約書に明記しておくと、実際に手続きを進める受任者が対応しやすくなります。

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