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親が認知症になったら相続はどうなる?対策と手続きを解説

親が認知症になったら相続はどうなる?対策と手続きを解説

親が認知症になると、相続の手続きが思うように進められなくなる場合があります。判断能力が十分でないと判断されると、遺産分割協議に参加できず、預金の引き出しや不動産の名義変更が止まってしまうことも少なくありません。結論から言うと、対策できるのは本人の判断能力があるうちだけなので、認知症の兆候に気づいた時点、あるいは兆候がなくても早めに準備しておくことが重要です。

この記事では、認知症の相続人がいる場合に起こりやすい3つの問題、判断能力があるうちにできる4つの対策、すでに認知症になっている場合の手続き、よくある質問までをまとめて解説します。対策としては、家族信託の「おやとこ」のような専門サービスや、任意後見に対応する終活サービスに相談するという選択肢もあるので、あわせて参考にしてください。

目次

認知症の相続人がいると起こる3つの問題

相続人の中に認知症の方がいる場合、判断能力の程度によっては、相続手続きのさまざまな場面で支障が出ることがあります。認知症といっても症状の重さは人によって異なり、軽度であれば影響が小さいこともありますが、判断能力が十分でないと判断されると、本来スムーズに進むはずの手続きが長期間止まってしまうこともあります。

特に注意したいのが、次の3つの問題です。

遺産分割協議が無効になる可能性がある

遺産分割協議は、相続人全員が内容を理解したうえで合意する法律行為です。認知症によって意思能力が欠けていると判断される場合、その相続人が参加した遺産分割協議は無効になる可能性があります。判断能力の程度は医学的な診断名だけで一律に決まるものではなく、実際の理解力や状況によって個別に判断される点にも注意が必要です。無効な協議のまま手続きを進めてしまうと、後から他の相続人や関係者に協議のやり直しを求められるリスクもあるため、少しでも判断能力に不安がある場合は、自己判断で進めず専門家に相談することが大切です。

口座凍結で預金が引き出せなくなる

金融機関は、口座名義人本人や相続人の判断能力に疑いがある場合、本人保護の観点から取引を制限することがあります。認知症の相続人が単独で手続きを進められないと判断されると、遺産分割協議がまとまるまで、相続財産である預金を引き出せない状態が続くことがあります。葬儀費用や施設利用料など、相続開始直後にまとまった出費が必要になる場面は少なくないため、預金が動かせない期間が長引くと、遺族の生活に直接影響が出ることもあります。

不動産の名義変更や売却ができない

相続財産に不動産が含まれる場合も、遺産分割協議が成立しないと相続登記(名義変更)を進められません。名義変更ができなければ、その不動産を売却したり、担保に入れて資金を借りたりすることもできず、相続財産の活用が長期間にわたって止まってしまうことがあります。相続登記は2024年から義務化されており、正当な理由なく期限内に申請しないと過料の対象になる場合もあるため、認知症の相続人がいることを理由に放置してよいものではない点にも注意してください。

認知症になる前にできる4つの相続対策

ここまで紹介した問題の多くは、本人の判断能力があるうちに対策をしておくことで避けられます。認知症の診断を受ける前、あるいは診断を受けても軽度なうちに検討したい代表的な対策を4つ紹介します。

遺言書の作成遺産分割協議そのものを不要にできる
生前贈与判断能力があるうちに財産を移転できる
家族信託信頼できる家族に財産の管理・処分を任せられる
任意後見契約判断能力低下後の財産管理・身上保護を事前に決めておける

どれか一つだけを選ぶ必要はなく、財産の内容や家族関係によっては、複数の対策を組み合わせておくことでより手厚く備えられる場合もあります。

まずは全体像をつかんだうえで、自分の状況に近いものから検討してみてください。

公正証書遺言で協議を回避する

有効な遺言書があり、その内容どおりに相続を進めるのであれば、相続人全員での遺産分割協議は原則として不要になります。認知症の相続人がいることによる協議の無効リスクをそもそも回避できるため、対策の中でも優先度が高い方法です。公正証書遺言であれば、公証人が作成に関与するため、後から無効を主張されにくいという利点もあります。自筆証書遺言に比べて費用はかかりますが、形式不備で無効になるリスクを抑えられる点も、認知症の相続人がいる場合には特に重視したいポイントです。

生前贈与で相続財産を減らす

判断能力があるうちに、特定の財産を家族へ生前贈与しておく方法です。贈与した財産は本人の相続財産から外れるため、将来の遺産分割協議の対象を減らせます。ただし贈与税や、相続開始前一定期間内の贈与を相続財産に加算する制度など、税務上のルールが関わるため、実行前に税理士へ相談することをおすすめします。贈与の方法や時期によって税負担が大きく変わることもあるため、思いつきで実行するのではなく、他の対策とあわせて全体の計画の中に位置づけることが重要です。

家族信託で判断能力低下に備える

家族信託は、本人(委託者)が判断能力のあるうちに、信頼できる家族(受託者)へ財産の管理・処分を託しておく仕組みです。契約で定めた範囲内であれば、本人の判断能力が低下した後も、受託者が財産の管理や不動産の売却などを進められます。契約内容の設計に専門知識が必要なため、司法書士など専門家への相談が前提になります。

自分で契約内容を一から設計するのが不安な場合は、家族信託専門のサポートサービスを利用する方法もあります。株式会社こころのカンパニーが運営する「おやとこ」は、初期費用231,000円〜(信託財産額に応じて1〜1.1%)、月額2,728円〜で、提携する弁護士・司法書士による契約書作成や登記手続きまで依頼できます。全国15拠点で対応しており、家族信託の契約件数は3年連続No.1(日本マーケティングリサーチ機構調べ)とされています。

任意後見で身上保護まで備える

任意後見契約は、判断能力があるうちに、将来の後見人となる人と支援内容をあらかじめ契約で決めておく制度です。家族に任意後見人を頼める場合はもちろん、身寄りがない、あるいは家族に負担をかけたくないという場合は、任意後見に対応する民間の終活サービスと契約しておく方法もあります。

団体名対応範囲料金目安
おひさぽ見守り・身元保証・財産管理・任意後見・死後事務など7支援身元保証・事務支援の一生涯契約99万円
終活と相続のまどぐち身元保証・終活相談・相続と遺言書作成の法律相談身元保証の基本料金33万円(税込)+利用分

両団体とも料金プランを公式サイトで具体的に公表しており、資料請求前に総額をイメージしやすい点が特徴です。

すでに認知症になっている場合の相続手続き

判断能力があるうちの対策ができないまま認知症が進んでしまった場合でも、相続手続きそのものを諦める必要はありません。事前の備えがある場合とない場合とで進め方は変わりますが、

次の2つの方法のいずれかで対応することになります。

法定後見人が遺産分割協議に参加する

すでに判断能力が低下している場合は、家庭裁判所に申立てをして、法定後見制度(後見・保佐・補助)の後見人等を選任してもらう必要があります。選任された後見人が、本人に代わって遺産分割協議に参加することで、手続きを進められます。ただし申立てから選任まで数か月かかることも珍しくなく、その間は預金の引き出しなどが進められない点に注意が必要です。また後見人は本人の財産を守る立場のため、いったん選任されると、相続対策としての生前贈与や資産の組み替えなど、本人の財産を減らす行為は基本的に認められなくなります。

遺言書があれば後見人は不要になる

本人が認知症になる前に有効な遺言書を残していた場合は、その内容どおりに相続を進められるため、認知症の相続人のために法定後見人を立てる必要がない場合があります。すでに家族に認知症の方がいる状況でも、他の相続人が生前に遺言書を残しておくことで、将来の同様のリスクに備えられます。今まさに認知症の相続人がいて対応に悩んでいる方も、自分自身の将来の相続については、今回の経験を踏まえて早めに準備しておくと安心です。

相続税の申告期限にも注意が必要

認知症の相続人がいて遺産分割協議に時間がかかる場合でも、相続税の申告・納付にはあらかじめ決められた期限があります。

手続きの遅れがそのまま税務上の不利益につながることもあるため、期限の仕組みとあわせて確認しておきましょう。

申告期限は原則として延長されない

相続税の申告・納付期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内と定められています。認知症の相続人がいて遺産分割協議がまとまらない場合でも、この期限は原則として延長されません。後見人の選任には数か月かかることも珍しくないため、認知症の相続人がいると分かった時点で速やかに手続きを始めないと、申告期限まで十分な時間を確保できないまま進めることになりかねません。

未分割申告は後から更正の請求で修正する

期限までに遺産分割協議がまとまらない場合は、いったん法定相続分で按分したものとして未分割のまま申告し、後から修正するという対応も可能です。ただし配偶者の税額軽減など一部の特例は、申告時点で分割が確定していないと使えないことがあります。遺産分割が確定した時点で改めて特例を適用し直す「更正の請求」という手続きもありますが、期限や要件が細かく定められているため、早い段階で税理士に相談しておくことをおすすめします。

認知症の相続に関するよくある質問

認知症と相続について、よく寄せられる質問をまとめました。

認知症と診断されたら相続対策は一切できなくなりますか?

診断名だけで一律に決まるわけではなく、実際の判断能力の程度によります。軽度の段階であれば、公正証書遺言など一部の対策が可能な場合もありますが、可能かどうかは個別の状況次第です。少しでも早く、判断能力が確かなうちに専門家へ相談することをおすすめします。

認知症の相続人がいることは金融機関にバレますか?

金融機関側が独自に把握することもありますが、家族が窓口で状況を説明したり、後見制度の利用が必要になったりする過程で判明することが一般的です。隠して手続きを進めようとするより、早めに正しい手順を踏む方が、結果的にスムーズに解決します。

任意後見と家族信託はどちらを選べばよいですか?

任意後見は財産管理に加えて身上保護(医療・介護に関する契約など)まで担える一方、家族信託は財産の管理・処分に特化した制度です。施設入居や入院の手続きなど、生活面の支えまで含めて備えたい場合は任意後見が向いています。任意後見とあわせて見守りや身元保証まで扱う終活サービスを利用すれば、判断能力が低下した後の暮らしの手続きもまとめて任せられます。

相続対策は何歳から始めればよいですか?

年齢に決まりはなく、判断能力が十分にあるうちであればいつでも始められます。健康なうちは先延ばしにしがちですが、認知症は本人が気づかないうちに進行することもあるため、家族に相続や終活の話が出たタイミングで、早めに検討を始めることをおすすめします。

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